これは、魂を込めたチョコレートなんです
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これは、魂を込めたチョコレートなんです

サステナビリティ推進部企画グループ長をつとめる山下舞子は、2014年に発売された「meiji THE Chocolate」の開発担当者の一人。研究所でチョコレートの研究に従事した後、工場勤務を経て商品開発部に配属になった山下は「meiji THE Chocolate」にカカオづくりに関わるすべての人の魂を込めたと語ります。山下にとっての「チョコレートは明治」とは!?  そして現在の役割についても聞きしました。

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絵に描いた餅を、食べられる餅にする

明治に入社後、私は研究所に配属されました。研究所で何をしていたかというと、チョコレートそのものの研究です。毎日毎日ボールとヘラを相棒に(笑)、チョコレートの味をどんなふうに仕上げるのか、どういう食感にするのかといった研究をしていました。チョコレートの材料はカカオマスと砂糖だけ。ごくシンプルな構成ですが、たった1%でも比率を変えるとまったく違う味わいになるんですよ。

配合を微妙に変えてチョコレートを作っては、毎回食べて評価するんです。1サンプルあたり食べる分量はほんのちょっとなんですが、それを何回も繰り返すので、1日に板チョコ4、5枚分は食べていたでしょうか。味がわからなくなると、途中で白湯を飲んでリセット。それからまた試食です。

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(研究所時代のスナップ。ヘラを片手にひたすらチョコレートと向き合う)

チョコレートが好きでないと、やっていられないかもしれないです。でも私は特にチョコレートを嫌いになることもなかった。ただ、休日にはチョコレートは食べなかったですね(笑)。

何パターンものチョコレートを開発したら、レシピを工場に送ります。工場でそのレシピが実際の生産ラインに落とし込まれていくわけです。

研究所で2年間、チョコレートの基礎を学んだ後、今度は技術職として工場に異動しました。研究所から送られてきたレシピを元に大量生産できるように、生産ラインに乗せていく役割です。以前とは逆の立場に立ったことで、研究所時代に工場の人たちに指摘されていたことの意味がよく理解できました。

「研究所の作ってきたレシピは絵に描いた餅だ」と言われたこともありましたが、いざ工場で仕事をしてみると、そう言いたくなる気持ちがよくわかる(笑)。落としどころを考えながら、絵に描いた餅をいかにして食べられる餅にしていくか。それが工場の役割なんだと、個人的には理解しています。

チョコレートを大人の嗜好品にしていきたい

工場には1年半勤務し、再度研究所に戻って3年半を経たのちに、本社の商品開発部に異動になりました。商品開発部というのは、文字通り商品を開発していく部署ですが、商品開発には2つのパターンがあって、新しい素材や技術などシーズを起点として開発を始めるものもあれば、こんなチョコレートがあったらというニーズ起点で企画をスタートするものもあります。当社の開発は、どちらかというとシーズ起点が多いですね。

明治の「ミルクチョコレート」が発売されたのは1926年。その頃は、チョコレートを使った商品のマーケットは更地みたいなものでした。そこからしばらくは、斬新な商品が次々に登場していました。

例えば「アポロ」。ご存じですか? イチゴチョコとミルクチョコを組み合わせて三角型に仕上げたチョコは過去になかったですし、クラッカーとチョコを合わせた「きのこの山」も前例のない発想だったと思います。すでになくなってしまいましたが、サクサクしながらふんわりとろける食感が特徴の「ポルテ」も、まったく新しい商品でした。ただ、最近は更地がかなり埋められてしまったので、ニッチなところを攻めるのですが、なかなか大ヒットにはつながらない。仕方がないことかもしれませんね。

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商品開発部に移ってからいろいろな商品を手掛けてきましたが、その一つが2014年に発売した「meiji THE Chocolate」です。チョコレートを大人の嗜好品にしていきたいと考え、カカオに対するこだわりを突き詰めていきました。明治でカカオに関わるすべての人の魂を込めた商品といっても過言ではありません。

いまこそ「チョコレートは明治」に立ち返る

「meiji THE Chocolate」の売れ行きは発売当初は好調でした。2週間は有名タレントを使ったCMの効果で板チョコのわりにはよく売れました。ただ、その後、ストンと落ちてしまった。そうなるとだいたい先が読めてしまいます。コンビニで週販が2個台くらいになるとカットラインに入り、棚に残らなくなります。2年目に味を追加するといったリニューアルをかけると少し売り上げは戻るものの、初年度の8掛程度。それを繰り返して廃番になるというパターンです。

「meiji THE Chocolate」も現状のままでは行く先が予想できたので、2015年1月にこのブランドをやり直すプロジェクトを立ち上げました。「meiji THE Chocolate」は、明治の魂を込めた商品です。商品力には揺るがない根拠がありながら、なぜ売れないのかを考えなければいけないと考えました。

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明治は日本のチョコレート文化を育ててきた会社です。だから、ヨーロッパのように、大人の嗜好に耐えうるものを提案するのは、明治としての責任でもある。いまこそ「チョコレートは明治」に立ち返り、「meiji THE Chocolate」を再構築しようと考えました。「明治という会社をどうするか」くらいの気持ちでやり直したというのが正直なところです(笑)。

初代の「meiji THE Chocolate」はビター系2種類のラインナップでしたが、どちらもカカオ分は60%前後。この数字は日本に多いミルクチョコレート好きの人を考慮した結果です。でも、それは中途半端な設計でもありました。ビター好きの人には物足りないし、ミルクチョコ好きには試してもらえないからです。そこでリニューアルをかけ、ビター系はカカオ分70%にして、新たにカカオ分50%ぐらいのミルクチョコタイプを追加しました。それぞれのキャラクターを際立たせた形です。

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もうひとつの大きな変更点は、フレーバーを一切入れていないこと。バニラを入れていないチョコレートは、少なくとも明治としては初めての試みだったのではないかと思います。カカオは農産物なので、品質には「ゆらぎ」があります。フレーバーにはこの「ゆらぎ」を安定させる役割がありますが、この「ゆらぎ」ごと楽しんでもらいたいと考えたんです。

ワインも年によって味わいが違いますよね。でも皆、それを当然のこととして受け止めている。チョコレートもそうしていきたかった。フレーバーに頼れない以上、素材の質を上げていくしかありません。その方向を目指しました。

産地とお客様を良いサイクルでつないでいく

リニューアルした「meiji THE Chocolate」が受け入れられるかどうか。確信はなかったです。もともと日本では、板チョコはあまり売れません。明治も何度も失敗した過去があり、「meiji THE Chocolate」もスペシャリティチョコレートとしては8回目のチャレンジだったんです。ただ、営業も含めて、こういうチョコレートがあったらいいなと皆が思っていたものを形にできているはずだという自負は強くありました。いざ蓋を開けてみたら、すごく話題にしていただいたので、それは本当にうれしかったですね。

昨年4月からはサステナビリティ推進部に異動になり、商品開発部から離れてしまいましたが、チョコレートへの思いは変わっていません。「meiji THE Chocolate」は現在の商品開発メンバーで9月にリニューアルしたばかりですが、これからの健闘も楽しみにしています。

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(山下の手元には新旧の商品)

サステナビリティ推進部は、一言でいうと、人権や環境課題の解決に向けて事業を通して貢献していくために、グループ全体のサステナビリティ活動を加速させていく部署です。チョコレートをはじめ、商品を作って売って適正な利益を得ることは企業を存続させる上では必須なことですが、自分たちの存在意義や、世の中とのつながりといった根っこの部分も考えていかなくてはならないので、とても真摯な気持ちになりますね。

「meiji THE Chocolate」はカカオ農家の方の協力や信頼関係がなくては成立しないブランドです。この商品をドライブとして、産地とお客さまを良いサイクルでつなぎ、サステナビリティを推進していきたいと思っています。

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[プロフィール]
山下舞子(やました・まいこ)
サステナビリティ推進部 企画グループ長。meiji THE Chocolateブランドの生みの親。植物を育てるのが好きで、レモン、大根、オクラ、バジルなど、さまざまなものをプランターで栽培。”推し ザ・チョコ”は「ブラジル」。

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